2005.11.13

山階鳥類研究所からの回答

 去る10月11日に山階鳥類研究所へ出向き標識研究室長、尾崎清明様と面会をし下記の質問をさせて頂きました。

その回答を頂きましたので公開を致します。質問の一部は個人のプライバシーに触れていますのでWEBでの公開は差し控えさせて頂きます。また、回答を読んで頂く方に先入観を与えないよう、管理人個人のコメントも今回は控えさせて頂きます。

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佐藤 信敏様

先日要請のあったご質問への回答です。佐藤様個人からの質問と認識していますので、公開される場合は佐藤様のホームページに限って下さい。また、全文をこのまま使って下さい。

山階鳥類研究所 標識研究室長

 尾崎清明

1 今月出される(出された)通達はどのような内容か

回答:鳥類標識センターでは定期的にバンダーに対して、一斉連絡を行っており、その中で調査への注意事項も連絡周知するようにしています。10月に配布した文書では、以下のような内容を加えました。

 バンディング啓蒙活動等に関して、指導者の資質、受け入れ体制、鳥への配慮、法的問題への考慮、レクチャー内容の充実など注意点を示しました。また、ホームページ作成に当たっては、説明不足や不適切な表現による誤解も起るようになってきているため、表現には充分注意することや、使用する写真等については不快な印象を与えないような配慮を指示しました。


2 今後調査からはずれた行動を抑制する具体的対策を示して欲しい。

回答:バンダーになるときの講習会、および定期的なバンダーへの一斉連絡等の機会に、バンダーの義務を厳守することを今後とも周知徹底いたします。

3 学校教育と標識調査との関係について説明して欲しい。

回答:環境省の観測ステーションで研究所員が標識調査中に、標識調査及び鳥類への理解を深めてもらうために小中学校の見学を受け入れることはあります。また各バンダーが講義、観察会等の要請を受けた場合、バンダーの責任において協力していると思います。


4 バンダーの教育について・・・識別の知識、法令関係の教育は行っているが、バンダーの適性については行ってないようです。人選を誤ると鳥への危険が増加するが、適性については現役バンダーの推薦という形でしかチェックされていないのは何故か

回答:バンダーになるには、現役のバンダーの推薦をもらってバンダー講習会を受講して、山階鳥類研究所の認定を受ける必要があります。したがって、バンダーの適性に関してはまず現役バンダーが把握しているわけですが、それ以外の情報も参考にして受講生の選考を行います。講習会では、複数の研究所員が長時間観察することにより、バンダーとしての適性をチェックしています。

5 内部情報では問題があるバンダーもいると言う話だが、そのような人が推薦をする人を信頼できるのか疑問である。道徳面の教育に力を入れるべきではないのか。

回答:前項で述べたように1人のバンダーの推薦だけでバンダーになれるわけではありません。バンダーの教育については、毎年定期的に一斉連絡を出し、この中で適正なバンディングができるよう調査実施の際の諸注意なども掲載し、注意を喚起しています。また、バンダーからの質問、疑問などには常時担当者が答える体制を作っており、問題がある場合には適宜当該者に注意を行っています。


6 獣医さんは足を持つ保定方法は脱臼に直結し写真撮影以外では役に立たないといっているが、バンダーの方、山階鳥類研究所はどのように捉えているのか

回答:足を持つ保定方法は、両方の脛骨の基部をしっかり持ち鳥が暴れないように注意すれば脱臼に直結するようなことはありません。鳥への負担を最小限にするため、長時間の保定は避けるようにしております。諸外国の中にはカスミ網から小鳥類をはずす際にこの持ち方を推奨している国もあり、適切な保定方法により行われることが必要と考えます。

7 網に掛かり、袋に入れ、足環を付け、各部の測定をするだけで相当の時間が経っていると思う。鳥への負担を少しでも減らすと言う本来の目的から考えても、写真など撮っている時間はないと思う。ほとんどのバンダーは時間をかけて、いろいろな写真を撮影しているが何故か

回答:捕獲した鳥は必要な調査と記録をしたうえで短時間のうちに放鳥するように指導しているので、ほとんどのバンダーが各部の測定や写真撮影のために長時間鳥を拘束しているとは思いませんが、今後とも適正な取扱について周知いたします。また、鳥類標識センターとしてバンダーに対して捕獲時の鳥の写真撮影を奨励していませんが、撮影による鳥への負担を配慮しながら、捕獲した鳥を最小限撮影することは必要なこともあります。すなわち標本ではなく、生きた野生の鳥の細部の撮影によって、これまで判らなかった種、亜種、性、齢、換羽、裸出部の変色などの識別の研究が可能となり、虹彩、口内、舌斑などの加齢に伴う変化の詳細情報が得られるからです。バンダーが性判定や年齢査定を重視するのは、趣味的な理由からではなく、その技術が標識調査データの生態学的な分析の重要なツールとなるからであり、標識放鳥時の性、年齢が正確に記録されることにより、性・年齢別の寿命、生存率、分散・渡りの傾向が把握でき、種生態の基礎データを得ることができます。日本のバンダーが性・年齢の査定に重要な貢献をした例として、ハクセキレイ、オナガ、ヨタカ、アオジ等があります。

8 調査の時に怪我をしたり死んだりする鳥の数はどのくらいなのか。また、そのような報告はあるのか。正しい数字か。

回答:バンダーは調査時に怪我や死亡する鳥が出ないように最大限努力をしていますが、標識調査では一時的ながら野生の鳥を網などで捕獲する必要があり、その際に残念ながら犠牲となる個体が出る場合があります。ある程度の規模でカスミ網によって捕獲する場合、1,000羽に4羽ぐらいの死亡例があるものと把握しています。

9 標識調査が野鳥の保護に役立った例を教えて欲しい。

回答:現在日本は4カ国とそれぞれ二国間の渡り鳥保護条約(あるいは協定)を結んでおり、国際的な鳥類の保護施策の柱となっています。これらの条約の中で重要な意味を持つ渡り鳥のリスト作成や改訂の際に、鳥類標識調査で得られた回収記録などは必要不可欠な資料として役立っています。また、条約に基づく共同調査でも標識調査の実施が重要視されており、最近ではアメリカとの間でハマシギ、オーストラリアとの間ではベニアジサシ、中国との間ではスグロカモメ、ロシアとの間では日本海を渡る小鳥類の共同調査などが実施されています。また、渡り実態の資料収集や国際間の情報交換を通じて、これらの種の現状と保護の必要性について関係者や一般市民の関心を高めることにも効果をあげています。

 標識調査によって明らかにされた繁殖地と越冬地の関連や渡りの経路などは、渡り鳥の基礎的な生態情報で、これが無ければ長距離を移動する鳥類の効果的な保護策を講じることは困難です。現在環境省などが東アジア地域で進めている、ツル類、ガンカモ類、シギチドリ類のそれぞれネットワークによる保護の構想は、標識調査などの基礎的な情報から発展したものといえます。また、渡りの状況や生息状況を含めて、環境省やバードライフ・インターナショナルのレッド・データブックには、標識調査で得られた資料が活用されています。
 鳥類保護のためには個体数の増減を把握することが肝心ですが、標識調査による個体数の変動のモニタリングもそのための重要な資料となっています。特に視認困難な小鳥類の把握に関しては、標識調査が効果的です。そうした観点から、環境省の鳥類観測ステーションのいくつかでは渡り鳥、繁殖鳥および越冬鳥のモニタリングを実施しており、結果に関しては順次解析して報告書に掲載しています。

 標識調査による渡りの解析や個体数変動(特に急激な減少)の把握が、直接的に保護に役立ったいくつかの実例があります。例えば、1965年以後に個体数が激減したイギリスにおけるノドジロムシクイの減少の主因は繁殖地での農薬の使用ではなく、越冬地アフリカ西部における干ばつと開発の影響であることが標識調査により解明されました。また、イギリスにおける近年のイエスズメの減少は、農作業の変化などによる幼鳥の生存率の減少が主因であることが標識データから解明され、イエスズメをはじめとする農耕地に生息する鳥類の保護が行政によって検討・実施されています。

標識調査で得られる渡りや生態の基礎データは、すぐには直接保護に結び付かない場合でも、鳥獣保護のために必要な基礎的な情報として当然調べておくべき事項に含まれると考えています。たとえば、標識調査により日本で繁殖するオオヨシキリの渡り中継地として中国南部が重要であることがわかっていますが、こういった基礎データがそれぞれの種について十分に蓄積されて初めて、何らかの保護上の問題が起こったときに適切な対策が取れるものと考えています。また鳥の生存率や寿命の研究は、ヨーロッパでは1940年頃から行われ、国内でも標識調査によって多くの種で野外での長寿記録が得られており、こうした知見は鳥類保護管理に不可欠な資料となります。小鳥類の渡りや寿命などの生態を正確に調べる技術は、標識調査の他には知られていません。

このように標識調査は元来、鳥類の渡りのコースや越冬地、繁殖地を明らかにすることを主目的に始められたものですが、鳥の生活や行動、寿命、識別などを研究するのに有効なため、いろいろな研究の方法に取り入れられるようになり、その結果が鳥類保護に有用なデータを提供するようになっています。

 その他、標識調査で用いている鳥類の安全な捕獲技術を応用して、日本において絶滅に瀕したコウノトリとトキを保護増殖の目的のため無傷で捕獲した実績もあります。また、標識調査の技術の応用により、日本産と外国産のメジロとウグイスの識別マニュアルが発行され、密猟防止と違法飼育の摘発に活用されています。さらに最近では標識調査で得られた日本に渡来する鳥類の繁殖地に関する知見が、鳥インフルエンザ対策の立案に貢献すると同時に、標識調査での鳥類の捕獲技術と調査場所に関する情報はウィルスのサンプリングのためにも応用されています。

  

10 渡りの中継地である離島(特にエネルギー補給のため)において標識調査をする事による危険度はどの程度であると捉えているのか。

回答:離島に立ち寄る野鳥の目的はエネルギー補給のためだけではなく、天候急変による一時避難や休息なども考えられます。離島で春や秋の渡り時期に確認される野鳥は痩せている個体から、脂肪を十分に蓄えた個体までさまざまであり、離島に立ち寄る鳥の全てが弱っているわけではありません。離島での標識調査はこうした状況を十分に考慮しながら、注意深く行っています。


11 標識調査の結果報告書として「渡り鳥アトラス」があるが、ほかの結果報告書はあるのか。

回答:鳥類標識センターとしてとりまとめて印刷した報告書や最近の山階鳥類学雑誌に掲載された論文には以下のものがあります。

・山階鳥類研究所標識研究室 1985 日本の鳥類標識調査(昭和36年〜昭和58年)

・山階鳥類研究所 1996 渡り鳥アトラス
・山階鳥類研究所標識研究室 (昭和50年〜平成6年まで毎年) 鳥類観測ステーション運営
・山階鳥類研究所標識研究室 (平成7年〜平成13年まで毎年) 鳥類標識調査報告書

・Yoshii,M. et.al. 1989. Japanese Bird-Banding Now and Past. J. Yamashina Inst. Ornith.21:309-325

・米田重玄・上木泰男:2002.環境庁織田山一級ステーションにおける標識調査 -1973年から1996年における定量的モニタリング結果- 山階鳥研報34:96-111

・広川淳子・浜田強・樋口孝城:2003. 北海道西部におけるオオジュリンの帰還調査 山階鳥学誌35:45-51
・小松吉蔵・佐藤弘・藤沢幹子・千葉晃:2004.標識調査の結果からみた 新潟市 におけるウグイスの渡りの様相 山階鳥学誌36:28-36

12 かすみ網は無差別に野鳥を捕獲するが、捕獲されたレッドリストになっている野鳥に対する保護策は設けているのか。無いときは何故か

回答:国内希少野生動植物種又は天然記念物で保護されている種については、それぞれの法律での許可がなければ捕獲はできず、万一許可を受けていない鳥が捕獲されてしまった場合は、速やかに放鳥することになっています。そのほかの許可を受けている種については通常の標識を装着して放鳥します。希少な種は一般に生態などに関する情報が乏しいことが多いので、標識調査によって得られる情報を保護に役立てるべきと考えます。


13 捕獲された鳥に全て標識を着けているのか。着けているとしたら、それは何故か。

回答:基本的に捕獲された鳥のうち健康な個体に標識をつけます。奇形や以前の怪我などで長期の生存が危ぶまれるような場合には装着しません。また、捕獲時に怪我をした場合は、状況に応じて一時的に保護収容するか標識をつけずに放鳥します。捕獲許可対象外の種や種名の確実な判定ができない鳥が捕獲された時にも、標識をつけずに放鳥します。


14 渡り鳥アトラス(スズメ目)について・・・全体の回収率0.28%のうち夏鳥の回収率は0.12%。ツバメ科の4種(ツバメ、イワツバメ、ショウドウツバメ、コシアカツバメ)を除く夏鳥の回収率は0.08%、更にこのうち渡りを経験した6ヶ月以上経過したものは0.04%。1羽のデータを得るために0.08%だと1250羽、0.04%だと2500羽捕まえなければならない。調査の際の落鳥率を考えると、非常にハイリスク、ローリターンであると考えられる。この中にはレッドリスト5種が含まれる。この点はどのように考えているのか。

回答:まず、「6ヶ月以上経過したもの」とそうでない「短期間回収」との定義に多少誤解があるようですので、説明します。「6ケ月以上経過後の回収」とは、放鳥地から回収地へ移動する間に一旦越冬地や繁殖地などで過ごした後の記録であって直接放鳥地から回収地へ移動したものではないと考えられる記録のことをいいます。一方「短期間回収」とは、放鳥地から回収地へ直接移動したであろうと考えられる記録です。

 現状では、夏鳥の回収率は0.10%(0.12%ではありません)と決して高いものではありません。それだけに1羽1羽の回収例が貴重なデータとなり、さらに回収率を上げることも大切なことです。また、標識調査によって得られる回収以外の再捕獲の情報も重要であると考えています。

 一例として再捕獲の中には、回収記録(リカバリー)の他にリターン(放鳥後6ケ月以上経過後に同一場所で回収された記録)やリピート(放鳥後6ケ月以内に同一場所で回収された記録)があり、新放鳥数に対してそれぞれ約3%と6%が得られています。リターンの記録からは帰還率が算出されますし、リピートの記録からは滞在期間などを明らかにすることができます。これらの記録は回収記録よりもかなり多くの例数があります。

レッドリスト記載種に関する標識調査については、前12項に述べた通りです。


15 今までに蓄積された野鳥の識別知識を書籍として刊行する予定はあるのか。

回答:すでに山階鳥類研究所としてはカラーマニュアル(識別編)として印刷し、バンダーへ供与しています。また、研究員がバーダー誌などで随時取りまとめたものがあります。現時点ではこれらをまとめて一冊の書籍として刊行する具体的な予定はありませんが、条件が整えば最新の知見を踏まえ加筆修正して刊行したいと考えています。

16 標識調査の意義、目的を今まで得られた結果を元に、具体的に説明を欲しい。

回答:多岐にわたりますので、ここでは項目と参照すべき資料名を述べます。

1 渡り鳥の生態解明
・繁殖地と越冬地およびその経路の解明(渡り鳥アトラス参照)
・幼鳥の分散の仕組みを明確にする(渡り鳥アトラス参照)
・種毎の平均寿命の推定、繁殖開始や終了年齢、最高寿命などの解明(各年度報告、渡り鳥アトラス参照)
・種毎の死因の究明

2 鳥類保護に役立つ資料の提供

 個体数の変動のモニタリング(各年度報告および前9項参照)
3 地域の鳥相の把握(各年度報告、日本鳥類標識協会誌参照)
4 他分野への貢献
 分類(酵素やDNA分析を含む)、形態、生理、重金属や農薬汚染の測定、寄生虫、捕獲方法
5 狩猟行政・管理への応用
 適正な捕獲量の設定や保護区設定などに役立つ資料の提供
6 国際協力
 渡り鳥保護条約などへの資料提供、共同調査による具体的な協力・資料収集

17 今後、標識調査はどのような方向に向かおうとしているのか。

回答:山階鳥類研究所としては、次のように考えています。
1 モニタリング調査の充実
2 国内調査空白地の解消
3 特定の種などを対象としたプロジェクト調査の企画
4 データの解析と活用
5 国外機関・研究者との連携
6 疫学調査などへの協力
7 カラーマーキング、電波発信機、衛星追跡などとの連携

18 回収率を向上するための対策を説明して欲しい。

回答:近年は回収記録の83%以上が標識調査中の再捕獲によっています。そのため、国内各地で調査を実施し放鳥数を増やすことが回収数の増加につながるものと考えます。さらに特定の種を定めて全国のバンダーに呼びかけ、数年間は集中的にその種に注目して調査を実施するといったことも効果があるでしょう。

 一般の方からの回収記録を増やすため、標識調査の意義と成果を広く発信し、多くの方に調査を知って頂くことが大切だと考えております。また、近年光学機器の進歩によって、望遠鏡などによるカラーマーキング(金属リング以外の色足環や番号付色足環、フラッグなど)の情報が多く得られるようになっています。さらに金属足環の番号を確認することも可能となっているので、野外観察で読み取り易い金属足環の開発も必要と考えています。

 一方、国外での標識回収率を上げるためには、ロシアや東南アジアを中心とした諸外国における標識調査の充実が必要であり、これまで山階鳥類研究所では、文部科学省及び環境省のODA事業などで、フィリピン・インドネシア・ベトナム・タイ・マレーシア・中国といった国々で、それぞれ3−4年間標識調査の技術移転を進めてきました。その結果、タイでは自国の足環を作成し標識調査を実施するようになりました。マレーシアのサバ州でも標識調査を開始しました。なかでも中国では、日中渡り鳥保護協定の締結もあって、標識調査がここ数年非常に活発となってきており、それによる新たな回収記録も得られるようになってきました。韓国との間では日本鳥類標識協会による交流が始まりました。しかしながらまだ十分とはいえませんので、今後とも周辺各国の調査が活発になるよう協力する予定です。


19 足環の装着による外傷の報告があるようだが、この点で調査をした資料はあるのか。ない場合は何故か。

回答:足環装着時の外傷は極めて稀です。特に専用のプライヤーを使用するようになってからは、初心者であってもサイズや手順を誤らない限り、事故はほとんど起こりません。

 放鳥後の足環装着の影響の有無については、タンチョウの雛への標識(約200羽、金属リングとプラスチックカラーリング)に関して長期間わたる追跡調査の結果、異常は確認されていません。また、足環を装着した小鳥が十分に長生きできることは、「渡り鳥アトラス」に掲載されたスズメ目鳥類の長期経過後の回収44例のうち38例が良好な状態で再捕獲されていることが大きな例証となるでしょう(残りの5例は死体収得による回収、1例は狩猟による回収)。たとえば、足環を装着して放鳥後11年経過したオオヨシキリ、10年経過したオオジュリン、9年1カ月経過したハクセキレイなど、足環を装着した極めて長寿の個体が、再捕獲後良好な状態で再び放鳥されています。


20 日本の場合、四方を海に囲まれていて渡り鳥にとって渡り自体が困難であることが予想できる。ヨーロッパ、アメリカ、カナダなどと違い周辺各国の標識調査の普及が進んでおらず、現状では渡りそのものの調査は大変難しいと思われる。これは回収率を見ても明らかである。このような状況下で渡りをする鳥種に調査を続行する意義は何か。

回答:日本と国外との国際間回収例が比較的少ないことは、日本の周辺で標識調査を実施している国や地域が少ないことと、こうした調査への理解が進んでいないことの現れであると考えられます。したがって、国際間回収率を上げるためにも、山階鳥類研究所や日本鳥類標識協会では、周辺国への標識調査の普及と理解を深めるための取組を継続的に行っています。標識調査の歴史の長いヨーロッパ諸国においては、調査の規模が大きく長期間継続したことにより、多くの回収記録が得られています。なお、標識調査の目的は国際間回収率をあげるだけではなく、国内の移動経路の解明にもあります。

さらに標識調査で得られる新放鳥の記録からは、様々な鳥類の生態や個体群動態の知見が得られます。9項や16項で述べた、個体数変動のモニタリングなどがその好例です。


21 足環が安全であるという根拠はどこにあるのか。

回答:鳥類標識調査は約100年の歴史があり、その間に各国の研究者や機関によって、鳥に最も負担の少ない安全な金属足環を開発してきました。現在使用されているのは国際的に通用するスタンダードなものであり、適正なサイズの足環を適正に装着する限りでは、鳥への安全性は高いと考えます。また、足環を付した鳥の長期経過後の再捕獲例があることもその例証となります(前19項参照)。

22 密猟者との関係もあるだろうが、標識調査の日時と場所を公表したらどうか。

回答:関係者間での情報共有は可能と思いますが、一般の方への情報公開は不法捕獲等を招くおそれがあり慎重に検討する必要があり、現時点では公表するべきではないと考えています。

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管理人から

 今回の山階鳥類研究所の回答につきましてのご質問にはお答えできかねますのでご了承下さい。

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野鳥の標識調査に関して写真家の和田剛一氏が取り組まれております。ご興味のある方・・野鳥に興味がある方は訪れてみて下さい。(シンボルマークが貼られました。一段落?)

「カワセミ日記」の中島さんのサイトでも標識調査問題を取り上げていますので、是非ご訪問して下さい。(ステッカーの配布がはじまりました)

日記を読んで標識調査に関心を持った方、直リンクで結構ですので是非お友達に紹介をして下さい。鳥たちの明るい未来のため、少しでも多くの方に標識調査に興味を持ってほしいと思います。

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