2005.10.30

鳥類標識調査と日本野鳥の会

最近かすみ網の不正取引に関連して日本野鳥の会の一部である全国野鳥密猟対策連絡会にお世話になりました。話を聞くと、日本野鳥の会の横のつながりはどうも薄いらしく、本部の協力がなかなか得られない現実を知り不思議に思っていました。いったい日本野鳥の会って何?と言う単純な疑問(管理人は疑問が好きである)が浮上してきました。そこで、日本野鳥の会の会則をじっくり読んでみることにしました。野鳥写真家の和田さんが仰るとおり大変素晴らしいものでした。

 今回は公開標識調査と称して各地で日本野鳥の会の一部の支部が行っている愛鳥イベントについて考えてみました。「日本野鳥の会の理念と活動」から引用をしながら、説明をします。

創設者中西悟堂氏が唱えた「野の鳥は野に」というのが、日本野鳥の会の根元的理念です。一言にまとめると・・・

『日本野鳥の会は、自然を尊び守り賢明に利用することが人類の存続と幸福にとって不可欠であるとの認識にたち、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を、社会の信頼を得て発展させることによって、自然と人間が共存する豊かな環境をつくることに貢献する。』

と言うことになります。

「自然の中で野の鳥と親しむことこそ野生の生きものと人間の関係における本来の姿であるという基本的な考えとし、人間が生存するために一獣一鳥一虫たりとも捕ってはいけないということではなく、無闇に殺生してはいけないということである。その上で、かわいそうだと思う憐れみの情、人間の自然な感情についても充分に配慮すべきである。」

 そもそも、標識調査は鳥獣保護法によって、一般の人が野鳥を捕獲することを禁じているところを、例外的に調査のために許されたものです。かすみ網で捕獲した野鳥を観察することは、決して自然の中での人間との関係とは言い難いものがあります。また、本来の食物連鎖とは関係なく、ともすると殺してしまう可能性がある観察で、網に捉えられた野鳥をかわいそうだと思う事は野鳥を愛する人間として当然の感情です。このようなことは好ましくないと書いてあります。

「人間に自らの意志を伝える術を持たない、人間社会からとかく無視されがちな野鳥や他の生きものたちを代弁」しなければいけない日本野鳥の会として、かすみ網で捕まえられた野鳥たちが人間にどのようなメッセージを投げかけていると考えているのでしょうか?

「普及活動の目的を達成するにあたっては環境教育の視点を重視する。野鳥を通しての環境教育のプロセスは、個人が野鳥に親しむことに始まり、野鳥を通してまわりの生きものとのつながりを観ること、そして自然界の相互関係を読んで、自然環境への興味を増していくことである。さら に、そうした自然への人間活動の影響にも関心を持つようになり、自然保護・地球環境問題への理解も深まり個人として「守ろう」と行動を起こす気持になること、である。」

 野鳥を観察し、野鳥が棲む環境に目を向け、自然保護の気持ちを起こさせる事が大切であると書いています。野鳥を観察する前に観察をする野鳥自体がかわいそうだと思わせてしまう標識調査は環境教育として全くなじまないものであることがわかります。ともすると日本野鳥の会から野鳥を守ろうという人もいるのではないかと思うのは考えすぎでしょうか。

「会の名称だけからみると、野鳥好きの趣味の会、珍鳥を探し求める会など野鳥だけに目をむける集団あるいは野鳥研究学術団体 というイメージが一般に強い。しかし、会は、野鳥にまず接し、野鳥に親しみ、野鳥から他の野生の生きものたちへと視野をひろげ、それらの生活する舞台である自然の素晴らしさを発見し、自然の美しさや神秘さに感動したい、そういう人たちの団体を目指している。自然にやさしい気持ちで「美しい自然・すばらしい 野鳥たちの世界」に接し、その自然を大切にしようとする人たちの会なのである。」

 このように会の性格付けをしているのですから、世間の反発が強く、危険が伴う標識調査を会のイベントとして開催することは日本野鳥の会にとってマイナスイメージだけを強調する結果になると思うのです。

 本来野鳥の保護をするはずの日本野鳥の会が、その理念に反して標識調査を啓蒙活動に取り入れていることに対し、管理人は????マークが頭の中にたくさん浮かびました。なにか違うのではないかと思うのです。

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参考資料  日本野鳥の会の理念と活動

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野鳥の標識調査に関して写真家の和田剛一氏が取り組まれております。ご興味のある方・・野鳥に興味がある方は訪れてみて下さい。(シンボルマークが貼られました。やる気モード突入?)

カワセミ日記」の中島さんのサイトでも標識調査問題を取り上げていますので、是非ご訪問して下さい。(ステッカーの配布がはじまりました)

日記を読んで標識調査に関心を持った方、直リンクで結構ですので是非お友達に紹介をして下さい。鳥たちの明るい未来のため、少しでも多くの方に標識調査に興味を持ってほしいと思います。

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