2005.09.10

 五月連休のとても暑かった日、その日からコアジサシの写真が撮れなくなった。コアジサシ達がいなくなったわけではなく、僕がコアジサシに会いに行けなくなってしまったのです。

 僕はコアジサシの写真を撮るために、いつもの河原へ出かけた。5月にしてはとても暑く河原でじっとしていると、羽織ってきたコートを脱ぎ捨てたくなる気温だ。いつものようにコアジサシ達はキュルルルと鳴きながら追いかけっこをしていた。

 鳥たちは河原の中州をねぐらとしていて、そこまで行くのにしばらく川の中を歩かなくてはいけない。そのために僕は釣り用の膝まである長靴を履いてきている。だいたい決まった場所に留まって休憩をとるので、その場所でじっと待っていると食事を終えたコアジサシがやってきてくれる。

 その日もいつもの場所で腹這いになり、コアジサシがやってくるのを待っていた。こぶし大の石がごろごろしていて腹這いになると体のあちこちに当たってとても痛い。石が当たらないようにうまく体を動かし体制を整える。三脚は使わないので手頃な石をレンズの三脚台座の下に置いて準備が終わる。待つときは1時間以上そうやってじっとしている。疲れると仰向けになり空を眺めボーとする。今日はとても良い天気だ。僕のすぐ上をコアジサシ達が音もなく飛んでいる。

 30分位して魚をたくさん食べたコアジサシがねらい通りの場所に留まった。

「コアジサシさん、こんにちは。写真を撮らせて下さいね」僕はそう声を掛けてシャッターを押す。こうして腹這いになりじっとして動かないと鳥たちは安心をするようだ。コアジサシはそこに人間がいることは解っているのに、くつろいだ様子で羽繕いをして、あくびをして、そして居眠りをする。僕はそういう鳥たちを飽きもせず眺めるのが好きだ。

 20分位、そうしていくつかの写真を撮影した。そのうちコアジサシは首を後ろに回し眠ってしまった。僕もそっと仰向けになり、雲が流れるのをぼんやり眺めていた。そのときコアジサシが声を掛けてきたのです。

「そっとしておいて下さい」

 僕は驚いてコアジサシを見た。けれどコアジサシは眠ったままだった。僕はしばらくそのままじっとして、コアジサシが目を覚まし飛んでいくのを待った。今のは何だったのだろう、きっと空耳に違いない。そう思った。

 僕はあれから中州に行けなくなってしまった。対岸から双眼鏡で眺めるだけだ。

 撮影日記のコアジサシギャラリーの更新が5月4日で止まってしまったのは、こんな理由がありました。 

 今、標識調査の件でいろいろなことを勉強しています。かすみ網もこの目で確かに見ました。

 そしてふと思ったのです。かすみ網は危険だと言っているけれど、自分はどうなのだと。目には見えないけれど僕の体から透明なかすみ網が出ていて、鳥たちにプレッシャーを与えているんではないかと。

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管理人はそういった自戒の意味も含めて「かすみ網」のシンボルマークを自分自身のサイトに貼り付けました。

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野鳥の標識調査に関して写真家の和田剛一氏が取り組まれております。ご興味のある方・・野鳥に興味がある方は訪れてみて下さい。(まだまだ元気です!)

カワセミ日記」の中島さんのサイトでも標識調査問題を取り上げていますので、是非ご訪問して下さい。(なにやら進行中です。興味津々)

日記を読んで標識調査に関心を持った方、是非お友達に紹介をして下さい。鳥たちの明るい未来のため、少しでも多くの方に標識調査に興味を持ってほしいと思います。

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