2007.01.15

 今回は双眼鏡の話です

特に双眼鏡を集めるのが趣味ではありませんが、いつの間にか4台の双眼鏡が揃ってしまったので眼視による印象とデジカメ(CANON S-50)でコリメート撮影した画像での比較テストをしてみました。
機種は天体観測用の70ミリ、鳥見用の20と32ミリ、オールマイティーの42ミリです。すべて防水で雨天での使用も問題ありません。


NIKON HG 8X20

重さ:★★★★★

シャープさ:★★★★

見やすさ:★★★★

扱いやすさ:★★★★★

視野の広さ:★★

コントラスト:★★★

デザイン:★★★★

色合い:暖色系

一番口径が小さく、軽くコンパクトに収納でき撮影の時にいつも持って行く常用機材です。暗いことを除けば焦点深度が深く画像が平坦でシャープですっきりとした自然な見え味。周辺部でも画像の流れは少なめです
色再現はニュートラルでわずかに黄色みが感じられます。
強いて欠点をあげるならばアイレリーフが15ミリと比較的短く、目の位置をきちんと決めないとブラックアウトしてしまうので慣れが必要であるということくらいで、個人的には高得点をあげられます。
20ミリでこの性能は特筆物です。

各部の操作性は優秀で高級感があります。


NIKON HG 8X32

重さ:★★★

シャープさ:★★★★

見やすさ:★★★

扱いやすさ:★★★

視野の広さ:★★★★

コントラスト:★★★★★

デザイン:★★★

色合い:寒色系

カメラを持っていかない鳥見にはメイン双眼鏡で使っていました。
明るくシャープな見え味ですが、焦点深度が浅くピント合わせがシビアです。覗いたときの強烈なコントラストと鮮やかな色再現と立体感はすばらしく背景と鳥が分離して見えるのはさすがです。視野が広々して周辺で画像が流れることも少ないです。
ただ、色収差が少し残っていて、輪郭に青が乗るので長時間見ていると目が疲れやすいようです。
重さの割りに重量感があり、ずっしりとした持ち味なのは良いですがホールドしたときのバランスが悪く手ブレがしやすいようです。ピントリング、目幅ヒンジなどはウルトラスムースで高級感にあふれています。
口径が42ミリのライカと比べても口径の差ほど夜間での明るさがあまり劣らず、光学系の透過性能は優秀です。

スワロフスキー、ツアイスなどと比べてみましたが、立体感表現などでは優れていると感じました。


LEICA ULTRAVID 8X42BL

重さ:★★★★

シャープさ:★★★★★

見やすさ:★★★★★

扱いやすさ:★★★★

視野の広さ:★★★

コントラスト:★★★★

デザイン:★★★★★

色合い:ニュートラル

最近衝動買いをしてしまいました。

クラシカルな綺麗なデザインと最先端の技術が出会うとこのような双眼鏡が出来るのだと思います。
42ミリの口径でマグネシウムダイキャスト&チタンヒンジシャフトを使い710グラムという重さに仕上がっています。
ニコンと比べて周辺の流れは残っていますし画像の湾曲も感じられますが、覗いたときの自然さ、シャープさはすばらしいの一言。双眼鏡で見ている感じが少なく肉眼でダイレクトに見ているような感じです。
色合いは肉眼で見た時と同じでニュートラルで派手な色再現はしませんので、長時間覗いても疲れることがありません。HG8X32と比べると一見コントラストが低いように感じますが、自然な感じはここから来ているのでしょう。
焦点深度が深く老眼の管理人にとっては嬉しいもの美点です。何よりホールドしたときのバランスがよく手ブレがしにくい事がうれしく長時間の観察でも疲れにくいようです。
欠点といえばニコンと比べピントリングの操作感が安っぽくスムースではないのが残念です。もっともそのためピントのリングが不用意に動くこともなく、実用上はなんら問題はありません。
少々値段は張りますが、期待を裏切らない双眼鏡だと思います。
鳥見でのメイン双眼鏡になると思います。

不思議なのは望遠鏡の性能の目安となる焦点内外像の対称性はあまり良くありませんが、見た目はシャープであることです。ライカ独自の光学設計に秘密があるのでしょうか?星を見てもシャープで土星のリングの存在は確認できますので、星空観望にも使えます。
ちなみに、ニコン、フジノンの焦点内外像の対称性は優秀です。

スワロフスキー、ツアイスも優れた双眼鏡ですが、重さ&覗いた時の自然さ&色表現&ホールドしたバランスでは優れていると感じました。


FUJINON FTM-SX 10X70

重さ:★

シャープさ:★★★★★

見やすさ:★★★★★

扱いやすさ:★

視野の広さ:★★

コントラスト:★★★★★

デザイン:★★★

色合い:ニュートラル

天体観察用で買った物なので、鳥見ではあまり使いません。

ピント合わせは接眼レンズを左右別々で回すので、焦点を頻繁に変える用途には不向きです。
もっとも、このクラスの双眼鏡を買うのは船舶用か天体観察をする人くらいでしょう。
ダハプリズムとポロプリズムの違いがありますので上記の三機種と比較するのは出来ません、明るくハイコントラストでシャープでナチュラルな色再現と良いことずくめです。三脚に載せて使うので重さは関係ないのですが、何より重い!

ツバメのねぐら観察では暗くてニコン32ミリで確認できない様子がフジノン70ミリだと余裕で観察できるのはさすがです。


次にデジカメの望遠側で撮影した画像の中心部ピクセル等倍の画像比較です。

ここまでの望遠撮影ではシーイング(大気の揺らぎ)の影響を強く受けるので光学系の分解能を客観的に見ることは難しく、あくまで参考程度ですのであしからず。

NIKON HG 8X20

色収差は少し残っていますがトータルで優秀な光学系です。

この口径でこの画質はすばらしいです。

NIKON HG 8X32

少し色収差が残っているようです。

解像感自体は良く、コントラストはとても高いです。

LEICA ULTRAVID 8X42BL

収差は十分低く抑えられていてすっきりとした画像です。解像感も素晴らしいです。

階調が豊かで、この辺が自然な見え味になるのでしょうか。

FUJINON FTM-SX 10X70

色収差が良く抑えられていてすっきりとしています。解像感も素晴らしいです。

倍率と光学系が違うので比較は出来ませんが、とても優秀な光学系です。


次に中心部の解像度を比較します。30メートル位離れた場所にA4サイズの解像度テストチャートを貼り、撮影をしています。
一般に解像度は口径に依存していて、同じ光学性能ならば口径が大きい方が解像度は高くなります。
カメラの望遠側で撮影をしたデータの中心部をピクセル等倍で切り抜いています。
口径20ミリの限界の解像度ではないでしょうか。
コントラストはそこそこです。中心のピンク色も押さえた色再現です。
想像していたよりも解像度は高くありません。
ピンク色は鮮やかに表現されています。
この派手な色再現が覗いたときの強烈な印象となっているのでしょう。
十分な解像度があります。
発色はナチュラルです。
色収差が少ないぶん、コントラストが上がって見えます。

鳥見での使用を考えると、この4機種ではライカがベストです。ただ、重たいカメラを担いでの使用だとニコン8X20に限ります。ちょうど8X20の見え味を明るくシャープにして視野を広くするとライカになる感じです。

店頭で覗き比べをしたらHG8X32が派手でクリアーな見え味なので、一番良さそうに見えると思います。事実、スワロ、ツアイス、ライカ、フジ、キャノンを比べましたが立体的な表現のニコンが好ましく思えました。しかし、三脚に固定してじっくり見るとなると、派手な見え味が目が疲れる原因になっているようです。

ここまでの性能を持っている双眼鏡だと、見え味とデザインの好みで選んでも後悔はしないと思います。

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