2005.12.31

2005年のまとめ・・・戯言

鳥の写真を撮影し始めて2年が過ぎようとしている。

 この道何十年のベテランの方がたくさんいる世界では、まだくちばしが黄色くピーチク言っている初心者である。しかし、初心者だからこそ感じる物もあることは確かだと思う。長いことその道にいると身動きが取れなくなってしまうとか、だんだん見えなくなってしまう事とか、当たり前になってしまう事もあるはずだ。

 ご存じかと思うが、管理人は今年の夏頃から「標識調査」というものに関わっている。事の発端は「ツバメの標識調査」と京都の小さな地方新聞社のWEBマガジンに載っていた記事や写真である。その2つ共に鳥の世界に入ったばかりの者にとってあまりにショッキングだった。

 「ツバメの標識調査」は環境省から委託された調査員が行っている調査マニュアルに則ったきちんとしたものであったにも係わらず、少なからず疑問が頭をよぎるものだった。WEBマガジンの記事や写真については、どう考えても納得できないものばかりであった。調査員であれば、あんな事が出来るのだろうか?

 納得がいかない物にはフタが出来ない質なので、手にはいる限りの資料を基に徹底的に調べてみた。写真から読み取れる情報・・・誰がその行為をしているとか、文脈から推測される状況などについて検証をした。その結果、多くの事項について法律違反の可能性が高い事がわかったのである。

 実際、環境省と山階鳥類研究所も法律で定められた捕獲許可証で出来る範囲を逸脱しているという認識を持っているのである。調査員について山階鳥類研究所の基本姿勢は各バンダーの行動は個人で責任を負うべきとしている。つまり、積極的に規制はしていないと言うことだ。これは、何をしても良いと言うことではなく、厳しい審査を通ってバンダーになった人達を信頼している事に他ならない。その信頼を裏切るような行為は山階鳥類研究所の顔に泥を塗ることになるのを決して忘れてはいけない。最新版の鳥類標識マニュアルを山階鳥類研究所から頂いてすり切れるほど読んでみたところ、安全に調査を遂行し鳥を無駄死にさせない為のマニュアルであることに気がついた。ぜひ、調査員の方はもう一度読んで頂きたいと思うのである。それと同時に、今後このような不祥事が起こらないような何らかの工夫が必要であろう。また、調査員が「ボランティア」という性格上、山階鳥類研究所は彼らが起こした不祥事についての対外的責任追求には応じられないという一面を内包していることも忘れてはいけない。

 一部では鳥の足(脛)を持って写真を撮影することに神経質になっているようだ。何人かの獣医さんに聞いたところ、足を持つことはあまり勧められない方法だという返事を頂いているが、研究のため鳥の扱いに十分になれた人が短時間持つことに関しては、必要悪として認めてはいる。実際、鳥の識別などに役立つ研究資料として撮影をするのは、ある程度仕方がないことだと思う。しかし、WEB等に載せてある写真を見る限りでは趣味性が高く、捕獲した際の単なる記念写真のように見受けられる。捕獲をして手に持って撮影できるということは、撮影条件をある程度同じに出来るということだ。そのメリットを最大限に生かさなければ意味がない。研究資料とするならば、色や形がはっきりと写っていることが最低条件になるはずだ。そのためには、少なくとも無彩色のグレーバック(標準グレーという)で撮影されないと正確な色の判断できない。WEBショップや、大きな写真の専門店に行くと売っているので、写真を撮影して研究資料としたいという調査員の方は是非購入して頂きたい。何のために写真を撮るのかをはっきりさせないと、それこそ鳥への虐待でしかなくなるので注意が必要だ。管理人も含め人間は自分勝手で欲深い生き物である。それを認め人間と野鳥との関係を改善することが双方にとって良い関係を築く上で欠かすことが出来ない。単に「野鳥がかわいそう」「野鳥を私物化するな」「野鳥を金儲けのネタにするな」と言っていても解決することは無いと思う。

 鳥類標識調査と聞いてそれが何であるか解る人はそういない。方法論的にも完成の域には達していず、日本ではまだ本格的稼働から35年間と西洋に比べ歴史が浅く成熟していない為に関係機関が積極的に広報活動をしてこなかったことが主な原因である。おそらく足環による標識調査はそれ自体で完結せず、一般に人の協力による目視やカメラでの観察、生理学的調査、環境調査、海外との連携その他の様々なバックアップがあって初めて結果が出る物だと思う。

 だからこそ、予算の獲得手段としての調査と言われないため、またよりよい調査とするためには、良きにしろ悪きにしろ標識調査という物を広く世間に知ってもらう必要がある。ジャパンバードフェスティバルでチラシを配布した事はご存じの方も多いと思う。一部の人にとって「過激」という印象があるようだ。しかし、「我孫子警察署」の道路使用許可をとり、事前にフェスティバル会場である「アビスタ」と「水の館」の2つの施設の配布許可をとり、「実行委員会」にも2度も断りを入れて行った行為なので「過激」と言うことは決して無いのである。標識調査という事に限らず、今の野鳥を取り巻く環境はあまりにもひどすぎる。こんなにたくさんのベテランバーダーの方がいるのに、そのことに気づいていないはずがないが、残念ながら鳥を見ることに忙しいらしく何かを訴えると言うような事をしている人はとても少ないようだ。フェスティバルというイベントを借り、程度の差こそあれ、数ある問題の一つとして標識調査を取り上げてはいるが「鳥を見るだけでなく、色々なことを考えて下さい」とアピールをしただけなのである。とかく何かに対し問題提起をしたりすると、批判的に見る人がいる。これは仕方がないことである。とにかく、今まで標識調査を知らなかった人が少しでも知るきっかけになったと感じている。

 野鳥の密猟がとても多いのに驚いた。年配の方が小さい頃、鳥を捕まえていたと言う事をよく聞くが、ちょっと前までは野鳥を捕まえても良かった。しかし今は法律で手厚く保護をされて許可なしでの捕獲は出来ないようになっている。色々調べていくうちに、今でも違法捕獲や密猟が盛んに行われている事がわかった。先月茨城で行われた密猟対策シンポジウムに出席をして、密対連をはじめ、たくさんの方々が密猟と戦っているのを知った。もっと草の根的な活動をしないと密猟は無くならない。少なくとも全ての日本野鳥の会の会員及び一般の方への啓蒙活動をする必要があるだろう。シンポジウムの資料が正式公開となったのでこの日記の下、もしくは密対連のサイトから入手が出来るので是非読んでいただきたい。驚愕の世界を垣間見ることが出来ると思う。

 ここからは極めて個人的な感想なので読み飛ばして頂きたい・・・ただ一つ残念なのは密対連が日本野鳥の会の一部として機能していることだ。もっと自由に活動をするために、財源を自己調達して日本野鳥の会と切り離し、日本野鳥の会は協力者としての立場からバックアップをして頂いたほうが良いように感じた。

 今年の夏から公私ともに忙しくなり満足に鳥を見る時間がなく日記の更新も出来ずにいたが、その分鳥の本や論文を読んだり調べ物をしたりと結構楽しかった。管理人はライフリストや鳥の識別などにはあまり執着は無く、鳥の生態がおもしろくなってきている。山階鳥類研究所の方が執筆されている書籍も何冊か興味深く拝読させていただいた。アマゾンや鳥海書房で買った、たくさんの本がまだ読み切れず部屋の隅に積んである(鳥海書房はレアな本が置いてありメールで注文出来るので重宝している)。来年も野鳥から始まり野鳥で終わるのだろうか。

 来年早々から重たいテーマを取り上げる予定なので今から憂鬱である。

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シンポジウム資料をダウンロード

11MBありますのでダイアルアップの方はご注意を!

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野鳥の標識調査に関して写真家の和田剛一氏が取り組まれております。ご興味のある方・・野鳥に興味がある方は訪れてみて下さい。

「カワセミ日記」の中島さんのサイトでも標識調査問題を取り上げていますので、是非ご訪問して下さい。

日記を読んで標識調査に関心を持った方、直リンクで結構ですので是非お友達に紹介をして下さい。鳥たちの明るい未来のため、少しでも多くの方に標識調査に興味を持ってほしいと思います。和

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