2010.05.01

最後の一瞬

森の中にたたずむ近代的な建物。森との融合をコンセプトに設計されて、すべてがガラス張りになっている。その建物は森の風景を映しだしそこに建物があるとは思えないほど、見事に森と一体化している。人間からみれば確かにすばらしい建築物である。しかし、元々そこの森に住む野生動物たちにとっては魔の建物となっていることもあるようだ。特に野鳥にとっては確かに魔の建物のようである。

これは窓ガラスにぶつかって死んでしまったハトの衝突痕である。飛んでいる鳥にとって見事にカモフラージュされたガラス張りの建物はその存在を隠し、まるで森が続いているかのように写るようだ。つまり鳥は森を映し出すガラスに向かって飛んで行き、そして、ぶつかるのである。
この写真はまさにその鳥がこの世に残した最後の一瞬の残像である。鳥は何の疑いもせずほぼ正面からぶつかり、胴体を押しつぶし尾羽の痕をもガラスに残すほどの衝撃があったことを物語っている。
たいがい何かの対策を求めても、森との調和を壊す、建物のコンセプトに合わないなどの理由で断られることが多い。人間が考えた自然との調和など本当の自然の前では何の役にも立たず、単なる自然破壊につながることもままあるのも事実である。本当に自然に優しいデザイン美とは何か、この写真を見るたびに考えさせられるのである